梅田界隈 2021年1月号

 

コロナのうっとうしさが一向に晴れない日が続きます。こんな時こそ目的の場所に一直線はやめて、ちょっと回り道してみようと思っていたら「梅田新駅建設現場で人骨」という新聞記事が目に入りました。新駅の予定地は浪速の昔「大坂七墓」と呼ばれた場所で、埋葬者の平均年齢は30代が多く、花柳病の人もいる、埋葬者からは当時の浪速の街に生きる人々の様相が読み取れるのだそうです。

現場を見るためにグランフロント大阪の最上階にあがってみました。あまり眺望は開けていませんが、縦長の窓から写真のような新駅建設現場を見ることができました。写真①

梅田近辺が開発されるのは1874年(明治7年)に鉄道が開通してからです。初代の「梅田ステンショ」は現在の駅の西の端あたりに建設されました。曽根崎新地や堂島新地(後の北新地)は元禄時代からかなりにぎやかだったけれど、丸ビルやヒルトンホテルの地域や阪急梅田の中崎町あたりは、田んぼや墓地がばかりで、大阪の中心地だった船場などからみれば大変な田舎でした。この地名の「梅田」ですが、元は「埋田」でした。地域の発展に伴い、「お初天神」の天神さんの梅にちなんで「梅田」というきれいな漢字に置き換えられたそうです。

写真①

駅建設が当時としてはかなり辺鄙なところに決定されたのは「そんな火の吹く機械が走ったら火事になるがな」と、船場や堂島の旦那衆の反対があったからとか。鉄道が人やモノの流通の中心となり、阪急電鉄の全身である箕面有馬電気軌道が1910年に梅田駅-宝塚駅間と石橋―箕面間を同時開業し、旧国鉄大阪駅周辺は東へ開発を進めていきました。そんな街づくりのために邪魔になった墓地がこの場所に集められたのだろうと考えられています。

阪急百貨店がターミナルデパートとして営業を開始したのが1929年。現在阪急梅田駅のある柴田や茶屋町の開発が進められたのは1970年代に入ってからでした。

写真②

旧大阪中央郵便局の跡地に地上40階188mのビル工事が進んでいます。この写真②は2020年8月、劇団四季劇場があるSONYビルのエレベーターから撮影したものです。前述の梅田新駅の建設現場も望めるというおまけつきでした。建設が進むと北側は見えなくなるでしょう。

地下鉄西梅田駅(今は大阪メトロです)の大阪第一ビルの方に歩いてみました。阪神百貨店や丸ビルの南側の開発は1960年代からでした。大阪駅の前、北新地や曽根崎新地のすぐ近くなのに発展が遅れたのは、第二次大戦のあとの闇市がそのままで、小規模な店や事務所には地権者もはっきりしないものが多くて、なかなか開発の手が付けられなかったのだと言われています。関係者の努力が実り、住民たちの同意があって第1ビルは1970年、第2ビルは1976年、第3ビルは1979年、第4ビルは1981年にそれぞれ完成したのです。

苦労の末に開発された地域ですが、今ではビルや通りに面した商店は閑散としていて、2階は空きスペースが多く、活気がありません。さらに悪いことには、これらのビルがそろそろ耐用年数を迎えるということです。写真③

大阪駅周辺は、北にグランフロント、そして西に関空とつながる新駅や建設中の郵便局のビルなど、次々と開発が進められています。その近くにある第1ビルから第4ビルの地域は建て替え、そしてその後の集客力など不安要素がいっぱいの地域なのです。

写真③梅田第一ビル(天井が低く区画も小さいのは当初駐車場になる予定の場所に入居希望の商店全部引き受けたため)

現在阪神百貨店が改築中、来年秋に開業します。その西に隣接する高層ビル「大阪梅田ツインタワーズ・ サウス」も22年春に完成予定です。

梅田は大阪の2大繁華街の一つであるキタの中心地であり商業の中心地でもあります。近年は、いくつもの大学のサテライトもありナレッジセンターとしての側面もあります。梅田駅周辺の変貌は休みなく進んでいくのです。

現在阪神百貨店が改築中、来年秋に開業します。その西に隣接する高層ビル「大阪梅田ツインタワーズ・ サウス」も22年春に完成予定です。

1930年代に同じような可動堰を兼ねた橋が市内に6か所もあったそうです。今はこの橋と、

水晶橋が歩行者用に残っているだけだそうです。70年代末に淀川大堰ができて、そして市

内の河川が埋め立てられ可動堰の必要がなくなったのです。長さ55mと「水晶橋」より少

し短く1978年に堰として役目を終え、改修されて「錦橋」と名付けられました。橋にはタ

イルに焼き付けた錦絵が飾られています。大阪市の治水は見えないところで着実に進んで

いるのだと思います。

学生の頃、中之島の図書館に行くために「水晶橋」を利用していました。

当時は、石段のついたかなりユニークな構造なのに、その由来など考えたこともありませで

した。

「橋を見る」という趣味があることを聞いたことがあります。英語で”Bridges”というそう

です(単数はトランプゲームです)。変わった趣味もあるもんだと思っていましたが、二

の橋を訪れた今回、「それもありやなー」思いました。

(文と写真:天野郡寿   神戸大学名誉教授)